で屑が出来るこた知っとるだろうね?」
「そうでもありませんよ。」
「君の眼に、屑でも屑でないと見えるんならそれでもいゝさ。」
あんまりしつこく支那人の肩を持っていると、邪推されるのは癪だが、小山と一緒になって自分の受持の者を悪く云うのは、なお更、自分が許さなかった。軸列と、浸点と、乾燥室は幹太郎の受持になっていた。
「あんな奴を放って置いちゃ、北伐軍でもやって来た日にゃ、手がつけられなくなっちまうんだ!」
小山は傷つけられたものを鼻のさきに出して鳴らした。
小山がむきになると、幹太郎は、ワザと、于の尻を押してみたい気持を感じるのだった。小山は、下顎骨が燐の毒で腐り、その上、胸を侵され、胴で咳をしていた。于は、人を小馬鹿にしたような、フーンと小鼻を突き出したりする支那人ではあった。
彼等は歩いた。
「※[#「口+愛」、第3水準1−15−23]呀《アイヤ》!」
その時、小函を一|打《ダース》ずつ紙に包み、更に大きい木箱に詰めている包装で、ふいに、シユーッシユーッと空気を斬る音響が起った。
仲間の工人から、工場での美人とされている、しかし、日本人が見ると、どうしても美しいとは思わ
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