武装せる市街
黒島傳治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)塵埃《ほこり》の色をした苦力《クリー》が
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|打《ダース》ずつ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ヘロ※[#「やまいだれ+隠」、第4水準2−81−77]《いん》者
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)フゴ/\していた。
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
五六台の一輪車が追手に帆をあげた。
そして、貧民窟を横ぎった。塵埃《ほこり》の色をした苦力《クリー》が一台に一人ずつそれを押していた。たった一本しかない一輪車の車軸は、巨大な麻袋《マアタイ》の重みを一身に引き受けて苦るしげに咽びうめいた。貧民窟の向う側は、青い瓦の支那兵営だ。
一輪車は菱形の帆をふくらましたまゝ貧民窟から、その兵営の土煉瓦のかげへかくれて行った。帆かげは見えなくなった。だが、車軸はいつまでも遠くで呻吟《うめき
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