い、家を焼き、村民全部を惨殺したりなどもやった。たび/\それをやった。いくら晒し首にしたところで、彼等の悪業のむくいとしてはやり足らぬかもしれなかった。だから、掠奪の被害をなめた群集は、むしろ残忍な殺し方を歓喜した。
「跪下《クイシャ》!」
 洋車からおろされた三人に、馬上の士官が叫んだ。三人は、へたばるように、くた/\と地べたに膝をついた。兵士は、荒々しく囚徒の肩を掴んだ。
「西へ向くんだ、馬鹿! そんな方に向いて仕置きを受けるちゅう法があるか、馬鹿!」
 また鎖が鳴った。三人は一間半ずつの距離に坐り直らされた。
 一人の肥ったせいの高い兵士は、青竜刀を肩からはずして、空間に気合をかけて斬る練習のようなことをやっていた。青竜刀は刃のところだけがぴか/\光っていた。鉈《なた》のようだ。
「包子《ポオツ》を持ってこい! 包子を持ってこい! 包子が食いてえんだ!」
 さきに、砲台牌《ポータイパイ》を要求したデボチンは、足の鎖を鳴らし、縛られた自由のきかない手を、ぱたぱたやって、メリケン粉の皮に豚肉を入れて蒸した包子をほしがった。
「ぜいたくぬかすな!」
「えゝい! 持って来い! 持って来い
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