う。何等の悪事をもしちゃいないのかもしれない。彼だって、のどかな罪のない幼時はあっただろう!
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チュアン イエン ペイフォン ツイ
イエンジュン ハン コアンフイ
パイ ファニャン ワンアルツイ
ホン ゾアン イ コン ウエイ
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「畜生! 俺れが人殺しでもしたと云うのか、畜生!」
九
支那では土匪が捕まると、市街をひきずりまわして、見せしめに、群集の面前で断罪に処するのが習慣となっている。斬られた頸は三つも四つも並べて路傍の電柱にぶらさげられ、晒《さら》し首にされた。
その頸はうす気味が悪かった。あるやつは、口をあけて歯くそのついた汚い歯を見せていた。あるやつは、笑いそうだった。しかめッ面をしているのがあった。夏は腐爛した肉に、金蠅がワン/\たかった。
人々は、一と目で、すぐ顔をそむけ、あとを見ずに通りすぎてしまう。土匪の中には、勿論、強盗を働いたものもあった。殺人をやったものもあった。邦人で無惨に殺された者も二人や三人ではきかない。
彼等は庄長から金をせびり、若しよこさなければ、土墻をめぐらした村を襲い、妻女を奪
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