は悪かった。
煎《い》りつくようなのどの乾きと、傷が生命を奪って行く、それとの戦い、疼痛などで、病室は、檻のようなわめきで、相呼応していた。
各部署の戦闘のはげしさは、負傷者の数と、思い切り無遠慮なその負傷ぶりによって完全に表現されていた。
「砲兵の榴散弾で、城門近くの歩兵がやられて居るんだ。照準が間違っているのにめちゃくちゃにうって居るからだ。味方の頭の上で味方の弾丸が炸裂しているんだからな。」
負傷者を運んできた担架卒は、ベッドの脇で、にが/\しげに呟いた。
「南軍の遺棄した弾丸を使ってるちゅうじゃないか。」
「ふむ、そうかもしれねえ。そんなことをするから着弾が狂って、味方の砲兵が、味方の歩兵を殺すんだ。」
「チェッ! そんなこともあろうかい。もともとろくでもねえ戦争だ!」
一ツのトラックの負傷者が、それぞれベッドに運ばれて、一時担架卒のがたがた出入する靴音が消えたかと思うと、まだ、軍医の傷の手あてが、みんなの三分の一にも行き渡らないうちに、次のトラックが病庭へ唸りこんできた。また、担架卒が、靴音をばたばたと、重い負傷者をかついで這入ってくる。
「□×が一等、やられる者が多
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