はじけた。すると、すぐ、火花が散った。そして機体は黒烟を吐き、火焔となって、つばさは、真二ツに折れ、真直に、大地をめがけてもぐるように墜落した。
市街戦はすんだ。
兵士たちは、ぐたぐたに、二日半の休息を得た。酒。一週間吸わなかった煙草を二日で吸い戻した。
街路の到るところに支那人の屍体がころがっている。
酸っぱい臭気! 無数の唸る蠅。
毛並の房々とした野犬と、乞食が、舌なめずりをしながら、愉快げに、野犬は尾を振り立てて屍体の間をうろ/\していた。
爆破された無電局の、天に突きさゝるようなアンテナ柱は、半分どころからへし折れ、傾き、倒れかゝっていた。振りかえる者もなかった。直す者もなかった。黒い土のような人間が、その下にころがっている頭蓋から脳味噌をバケツに掻き取っていた。
不意に出動!
午前四時、疲労が直り、性慾が頭を擡《もた》げかかった頃である。兵士達は、急然と叩き起された。
柿本は、支那商館の石の窓口から、とびこむとき、向う脛《ずね》をすりむいた。沃丁《ヨウチン》を塗ったあとが化膿して、巻脚絆にしめられる袴下は、傷とすれた。びっこを引きながら整列に加わった。東の空
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