に、呻いたり、わめいたりしていた。何十人いるか? 何百人いるか、数がわからない。着剣した銃を持って、四五人のカーキ色の兵士が、ばらばらと立っていた。
 ふと、俊が、何か叫ぶと、彼女の手を重く引いて、地上にがくッとへたばった。
「どうしたの?」
 俊は、流弾に脚をうたれていた。白ッぽいメリンスに血がにじんでいた。
「どうしたの?」
 傷の痛さよりも、弾丸にあたった意識が、すっかり、張りつめた気持を奪ってしまった。俊は、どうしても立ちあがれなかった。ほかの者はどんどん彼女達を抜いて走った。
 すゞは、妹に、自分の肩へすがらして、背負って立上った。二人だけが一番最後に取り残されていた。たび/\重い妹をすり上げた。つめたい血が、せわしくかわす、ふくらはぎに、ぽた/\流れかかった。
 ……人々は、S銀行の舎内のゴザの上で、一夜を過した。二枚のゴザの上に、十三家族が坐るのだ。医者はなかった。すゞは、ハンカチを裂いて、うたれた紫色の俊の太股をしばった。
 二人には、ゴザの端もあたらなかった。板の上に坐った。
「そこでは痛いでしょう。これに坐んなさい。」
 お歯ぐろをつけた小さいおばさんが、自分のねま
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