側面からここを圧迫する馮玉祥の騎兵部隊と、泰山の南を縫うて、明水平野に出た陳調元の優勢な一部隊に圧迫せられ、又、戦わずに、界首と、黄河の線を抛棄した。
敗北した軍隊は、雪崩《なだれ》を打ってこの古い都済南へ総退却した。
つゞいて、黄河の鉄橋を破壊しつゝ津浦線を、天津に向って退却した。逃げおくれることを恐れる山東軍の兵士は、さきを争った。貨車の屋根に梯子をかけて這い上った。ころげ落ちそうになった。屋根の上には兵士がすゞなりになった。
約六時間経って、王舎人荘で一夜をあかした南軍の顧祝同《クシュトン》の第三師は夜があけると同時に入城してきだした。つづいて、陳調元の第十三師と第二十二師が入城した。ついさきほど、張宗昌のために、優秀な機関車の都合をつけた、津浦線停車場の駅長は、顧祝同を停車場と、無線電信局へうや/\しく案内した。直ちにそこは顧祝同の軍隊によって占領された。
一時間の後、津浦線伝いに、賀耀祖の部隊が到着した。更に三時間の後、黄河に沿うて側面から迫りつゝあった方振武が到着した。これらの軍はすべてで、約二万はあったであろう。
夜になった。夜半近く、又、行軍縦隊や、自動車や、
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