をも知っていた。それを、小山は、それだけは知らん振りをした。
「紅毛人は、やっぱし、教会だとか慈善だとか云ってけつかって、かげじゃなか/\大きな商売をやっているね。こちとらとは、桁《けた》が異うわい。」
「只の学校、只の病院なんて、まるっきり、奴等の手ですな。どうしても。」
「うむむ。」
「しかし、今度は、いくら精鋭な武器を持って蒋介石がやって来たって、大人《たいじん》の方でも背水の陣を敷いてやるでしょう。どちらかというと、大人の方が、どうしても負けられない戦じゃありませんか。」
 彼は、専門家の山崎の前で、一ツかどの意見を示したつもりだった。顔は得意げになった。山崎はそれに気づいた。
「古鉄砲の張宗昌が、新しい独逸銃に負けるっていう胸算用だな……」
「なに、張大人が勝ったって負けたって、何もかまいやせんじゃないか。そんなことまで、何も鉄砲を売った人間の責任じゃないですよ。」
 髯のない山崎は、その唇の周囲には皮肉げな、君達はこんなことを云ったり、こねたりする柄か! と云いたげな微笑を含めた。
「北伐軍にゃ、まだ/\政治部を出た共産党が、だいぶまじっとるんだよ。」内川は、にが/\しげに
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