らがここまでやって来て、俺れらは、日本の国のために尽していると考える。国の利権を守っていると考える。その結果、肥え太ったブルジョアジーは、どんな政策をとってくるか? その結果、肥え太るのは、ブルジョアだけだぞ。金を儲けて、なお、労働者の頸をしめる。ダラ幹には金を呉れてやるだろう。しかし優秀な労働者は、ます/\頸をしめつけられるんだ。
「兵タイて、何て馬鹿な奴だろうね。」と高取は、感慨深かげに云った。「自分が貧乏な百姓や、労働者の出身でありながら、詰襟の服を着とるというんで工人や百姓の反抗を抑えつけているんだ。植民地へよこされては、ブルジョアをます/\富ませるために命がけで働いてやっているんだ。一体、なんのために生きているのか、訳が分らない盲目的とは俺等のコッたなア! 全く自分で、自分の頸をくくっているんだ!」
 皆んな、しみじみした、考えずにいられない気持になった。
「忍耐だ!」と木谷は心のうちで云っていた。「笞の下をくゞり、くゞって底からやって行かなきゃならないんだ。」
 ここにも、彼等が、内地の工場や農村で生活をした、それと同じような、――もっとひどい、苦るしい生活があった。彼らは
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