一緒に、睾丸をふり出して検査を受け、一緒に薄暗い兵営に這入って赤飯を食った。一緒に銃の狙い方を習った。剣の着け方を習い、射撃のしかたを習った。その工藤が、御用船の中で片づけられていた。何故、片づけられたか、それは云わなくッても分っている! 甘いしるこがすきな男だった。眼は火のような男だった。それが殺されてしまった!
それは、兵士たちの血を狂暴なものにせずにはいなかった。壁のざらざらした、屋根がひくい、息づまる寄宿舎で、彼等は思い/\の考えにふけった。
高取の横には、内ポケットまでさぐられて、ビラを見つけられ、重藤中尉に、頬がちぎれるほど殴りとばされた那須がいた。
那須は何も云わず黙っていた。
「いくら、ビラを取りあげて、やかましく云ったって、俺等の脳味噌まで引きずり出す訳には行かねえんだぞ!」
誰かゞ、云った。
「それはそうだ!」と、那須は黙って考えた。
「俺れが何を考えようが、何をやろうが、それゃ、俺の勝手だ!」
藤のようなアカシヤの花が匂っていた。その近くで柿本は、小母の一家がどうしているか、それを気にかけていた。
消息をたしかめるひまもなかった。
遠い血縁のはし
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