みに掴みとろうとするポスターが、二枚つゞけて貼りつけてある。
「中国人《ツンゴレン》、不斉心《ブチシン》、日本鬼《リベンクイ》、逞野心《チンケエシン》。」
傍にはこう書いてある。
もう一方の窓の上の壁には、人民から強奪、強姦して国を売る張作霖の漫画と、共産党とソヴェートロシアを、「共産賊党」「赤色帝国主義」と称しているポスターが、電燈の陰影の背後に、ボンヤリと並んでいた。これは、上海あたりで、既に、たび/\見受けたものだ。
米国は、こっちの野心を、もう、穿《うが》ちすぎるほど穿っているんだ。ポスターを見て、山崎は感じた。
満洲、蒙古、山東地方は、こっちが取らなけゃ、かわりに米国がそれを取るんだ。アメリカ人は、労働賃銀が動物なみで、原料がいくらでも得られる、殆んど組織がない支那へ眼をつけている。大工場、大銀行を持ってこようとしている。支那人すべてを、賃銀奴隷としてしまおうとしている。
「こんなにおそく、女郎買いにでもさそいに来たんか。」一人のせいの低い滑稽な顔をした支那人が、眼尻を下げて笑った。
山崎は、こっちからも笑いでそれに答えながら、陳長財に、どうだタフト先生の方へまわっ
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