れて、焚火からは見えないように、一歩ほどあとにおくれた。
陳は、この便衣隊の巣へ乗りこみながら、ちっとも恐れたり、取りつくろったりする様子がなかった。
二人は宿舎の方へ進んだ。こいつ、南軍の奴と何か連絡を持ってるんじゃないかな。ふと、山崎は陳を疑った。金を出せば何でも喋るが、まさかの場合は、向うへつく。そういう奴じゃないかな。
いくつも、いくつもの、適当に区切られた真暗の部屋の中に挾まれて、一つだけ電気のついたのがあった。支那語の話がもれていた。
二人は、窓の下を通って、暗い廊下へ曲った。反対側に出ると、その部屋の、入口は開けはなたれていた。鉄砲をガチャ/\鳴らしたり、弾丸《たま》を数えたりする音が聞えた。明らかに大学生ではない。黒服の支那人が、室内で、左の肘を水平に曲げ、拳銃をその上にすえて、ねらって撃つ真似をしていた。
その男は、ガチッと引鉄《ひきがね》を引いた。
「命中!」
が、弾丸が這入っていないと見えて発射はしなかった。
「おや、こんな、ロシヤの弾丸がまじっていやがら――こいつのさきは、両方とも尖っているんだぞ。」
弾丸を数えている奴が笑い出した。
「ロシヤは腹
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