の末になると、その雑草は、灰色になって枯れた。黄金色にみのった稲穂の真中を、そこだけは、真直に、枯色の反物を引っぱったようになっていた。秋からは、その沿線附近一帯をも、あまり儲けにならない麦を蒔かずに、荒れるがまゝに放って置く者もあった。
 冬の始めになった。又、巻尺と、赤と白のペンキ塗りのボンデンを持った測量の一組がやって来た。そして、望遠鏡のような測量機《レベル》でのぞき、何かを叫んで、新しく、別なところへ持って行って、四角の杭を打ちつけた。杭と杭とをつなぎ合す線は、今度はいくらか蛇のようにうねってきた。
「またもう一つ、別の電車をつくんじゃろうか。」
 親爺は、測量をする一と組の作業を見てきて心配げな顔をした。
「こんなへんぴ[#「へんぴ」に傍点]へ二つも電車をつけることはないだろう。」
「ふむ。それは、そうじゃ。」
 人々は、新しい杭が打たれて行くあとへ、神経を尖らしだした。敷地は、第一回の測量地点から、第二回の測量地へ変更されることになったのだ。
 はじめの測量には、所有地が敷地に這入っていたのに、今度は、はずれている。そんな地主や自作農もあった。はじめは、四カ所もはいってい
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