浮動する地価
黒島傳治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蜥蜴《とかげ》やヤモリがふいにとび出して来る。
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|畝《せ》か
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)蕨や、いたどり[#「いたどり」に傍点]や
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぽか/\暖かくなりかけた五月の山
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
ぽか/\暖かくなりかけた五月の山は、無気味で油断がならない。蛇が日向ぼっこをしたり、蜥蜴《とかげ》やヤモリがふいにとび出して来る。
僕は、動物のうちで爬虫類が一番きらいだ。
人間が蛇を嫌うのは、大昔に、まだ人間とならない時代の祖先が、爬虫に、ひどくいじめられた潜在意識によるんだ、と云う者がある。僕の祖先が、鳥であったか、馬であったか、それは知らない。が、あの無気味にぬる/\した、冷たい、執念深かそうな冷血動物が、僕は嫌いである。
だが、この蛇をのけると、五月の山ほど若々しい、快よい、香り高いところはない。朽
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