かましい頑固な親だった。
 今は、町へ出た娘達は、そこで、でっくわした男と勝手に一緒になった。
 村へちょっと帰って、又、町へ出かけた。
 次に村へ帰る時、又、別の男と一緒になっていたりした。人々は、それを当然のように思っていた。見てもなんにも云わなかった。
 田舎に居っても、時が移り変っていることは感じられた。
 昔流の古るくさいことばかりを守っている者は、次第に没落に近づいていた。人の悪い、目さきのきく、敏捷な男が、うまいことをやった。薪問屋は、石炭問屋に変り、鶏買いは豚買いに変った。それでうまいことをやった。いつまでも、薪問屋ばかりをやっている人間は、しまいには山の樹がなくなって、商売をやめなければならなくなっていた。薪問屋は、中間搾取をやる商売だ。しかし、そこからさえ、ある暗示を感じずにはいられなかった。
 親爺は、やはりちびり/\土地を買い集めていた。土地は値打がさがった。自作農で破産をする人間、誰れもかれも街へ出て作り手がなく売りに出す人間、伊三郎が、又、息子の学資に畠の一部を売る場合――秋に入ると一と雨ごとに涼しくなる、そんな風に、地価は、一つの売出し毎に、相場がだん/\
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