さがった。
そんな土地を、親爺はあさりまわって買った。僕はそれを好かなかった。親爺は、買った土地を抵当に入れて、信用組合からなお金を借り足して、又、別の畠を買った。五六口の頼母子講は、すっかり粕になってしまっていた。
頼母子講は、一と口が一年に二回掛戻さなければならない。だから、毎月、どっかの頼母子が、掛戻金持算[#「掛戻金持算」はママ]の通知をよこして来る。それで、親爺の懐はきゅう/\した。
それだのに親爺は、まだ土地を買うことをやめなかった。熊さんが、どこへ持って行っても相手にしない、山根の、松林のかげで日当りの悪い痩地を、うまげにすゝめてくると、また、口車にのって、そんな土地まで、買ってしまった。その点、ぼれていても、おふくろの方がまだ利巧だった。
「そんな、やちもない畠や田ばかり買って、地主にでもなるつもりかい?」
僕は馬鹿々々しさと、腹立たしさとで、真面目に取り合えない気になっていた。
「地主にゃこし、なれるもんか。たゞ、わいらにちっとでも田地を残してやろうと思うとるだけじゃ。銭を使うたら、それッきりじゃが、土地は孫子の代にまで残るもんじゃせに。」
親爺は、朴訥《ぼ
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