いれない物の見方にジミーは悩まされつゞけた。
 が、アメリカ陸軍の投げた巧妙な罠が、とうとうジミーを戦場に引っぱり出してしまった。しかし第一歩で、おもしろいことに出会した。ドイツの潜航艇は、彼を大西洋に[#「大西洋に」は底本では「太西洋に」]たゝきこんだ。次には彼は英国の病院へ収容せられた。そこで、彼は、英国のジョージ五世に言葉をかけられた。
「具合はどうかね?」
「おかげ様で大変いゝんです。」
「アメリカの軍人ですか?」
「いゝえ、あっしや、機械工なんで。」……
 最後にジミーは、一人のボルシェビイキの猶太人からリーフレットを受取って、それを二日のうちに全部まいてしまった。そのために、逮捕せられ、あらゆるひどい拷問に付せられたが、共犯者を白状しなかった。
 以上は、「義人ジミー」のホンの荒筋である。枚数が長くなることが気になって非常に不完全にしか書けなかった。
 こゝには、インタナショナルの精神と、帝国主義戦争××が叫ばれている。
 以上に挙げた、「クラルテ」と「夜」と、「義人ジミー」の三つの作品に於ては、そこに、ブルジョアジーの一般的戦争反対文学とは異ったものがある。プロレタリアー
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