ぶつかった。インタナショナリストであり、社会主義者であるジミーが、そういう武器を作ることが、立派な行為であろうか? そうして、惨忍な掠奪の分け前として、グラニッチ老人がくれる一時間四|仙《セント》の増給を受け取ってもいいものであろうか。この問題は、アメリカの農夫が作る小麦までが、英国に買い上げられ、ドイツの同志を打ち殺すイギリス兵士の胃の中に這入っていることを知るまで、彼を悩ました。武器の注文は益々増大して賃銀は昂騰した。それは、ついに、ジミーのような正直な社会主義者をすら有頂天にした。が、貸銀が上るにつれ、物価が上ってきた。そこで工場では、不平と非難の声が高まった。
「ストライキ! ストライキ!」
 それから工場を馘首され、ジミーは、郊外のある農夫の下働きに雇われた。
 そのうちに、ロシアには革命が起って、プロレタリアートが、自分の力で平和をかく得した。がドイツでは、ロシアへ進軍した。米国の社会主義者は、世界で唯一のプロレタリア国ロシアをふみにじっている独逸を倒すという範囲内で大戦に参加する者が出来てきた。
 憎むべき独逸軍をやっつけるべきか、軍国主義に反対すべきか! 二つの絶対に相
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