無産階級を奮起させる。プロレタリアートの戦争に対する態度は、その両方ともが、「夜」に於て最もよく現わされている。
アメリカの社会主義作家、アプトン・シンクレエアは、「義人ジミー」に於て、帝国主義戦争に対する、プロレタリア階級のいろ/\な意識の内訌を書いている。一面では、シンクレエアが欧洲大戦当時、彼自身がとった、少なからぬ苦悶の後に武器を肯定した心の位置を書いたものであるという。
欧洲諸国間の帝国主義戦争の危機が次第にはげしくなって行くと、それらの国々に於ける社会主義者や戦闘的労働者は、この戦禍に対する反対運動を開始した。それは、やがてアメリカの社会主義者をも立たせ、ジミーの属するリースヴィル社会党支部も演説会を開き、反対した。が、欧洲の黄金王や軍人は、とうとう自国の奴隷どもを戦場へ追いやってしまった。而してアメリカへは、それらの国々から武器の注文が殺到して、殆んどすべての工場は、武器工場に早変りした。ジミーが働いているグラニッチ老人のエムパイヤ工場も、武器工場に改造された。
ジミーは、自分の手で造られているものがドイツに於ける同志を打ち殺す砲弾であることに気づいて、重大な疑問に
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