い状勢になっているのである。
 マルセル・マルチネは、大戦を背景にして三ツの作品を書いている。戦場に行こうとする兵士達に呼びかけた詩集「呪われた時」と、戦争の後方で呻いている民衆の悲惨な生活をかいた小説、「避難舎」と、それからドイツ革命に暗示されて書いた戯曲「夜」である。就中、そのいくつかの詩と、戯曲とは非常にすぐれたものである。恐らく、今日まで日本語に訳されたプロレタリア文学の中で、最もすぐれたものゝ一ツであろう。
 資本主義制度が存続する限り戦争の準備が絶えない。又、戦争も絶えない。吾々は××××戦争には絶対反対である。しかし、戦争が絶滅するのは、最も多く圧迫された最後の階級であるプロレタリアートが、自ら解放されながら、全人類をも一般に階級制度から解放した時でなければならない。そこに達するまでには、×××戦争を経なければならぬ。プロレタリアートは、××××戦争には反対するが、××××は肯定する。マルチネは、「夜」に於て、××××戦争には反対しているが、虐げられ、搾取された無産階級が団結して遂行する××××は、これを肯定しているのである。「夜」は無産階級をして、冷かな熱性を覚えさし、
前へ 次へ
全29ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング