に傍点]た親爺さんか、不具者になった息子か、眼が悪い幼児をかゝえていた。女達はよく流産をした。子供は生れても乳がなくなって死んで行くのが少くなかった。
 役員はたび/\見まわりに這入って来た。彼等の頭上にも鉱石は光っていた。役員は、それをも掘り上げることを命じた。
「これゃ、支柱をあてがわにゃ、落盤がありゃしねえかな。」脚の悪い老人は、心配げにカンテラをさし上げて広々とした洞窟の天井を見上げた。
「岩質が堅牢だから大丈夫だ。」
 老人はなお、ざら/\に掘り上げられた天井の隅々をさぐるように、カンテラを動かした。キラ/\光っている黄銅鉱の間から、砂が時々パラ/\パラ/\落ちて来た。
「これゃ、どうもあぶなそうだな。」
「なに、大丈夫だよ。」
 彼等は左右に掘り拡げた。同時に棚を作って天井に向って掘り上げた。そして横坑は、そのさきへも掘り進められて行った。天井からは、なおパラ/\/\と砂や礫《こいし》が落ちて来た。
 昼食後、井村は、横坑の溝のところに来て、小便をしていた。カンテラが、洞窟の土の上や、岩の割れ目に点々と散らばって薄暗く燃えていた。
「今頃、しゃばへ出りゃ、お日さんが照ってる
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