土鼠と落盤
黒島傳治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鉱山《やま》の長屋
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)突っぱって手ご[#「手ご」に傍点]をした。
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)かさ/\と生い茂って
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
×:伏せ字
(例)彼の××××、
−−
一
くすれたような鉱山《やま》の長屋が、C川の両側に、細長く、幾すじも這っている。
製煉所の銅煙は、禿げ山の山腹の太《ふと》短かい二本の煙突から低く街に這いおりて、靄のように長屋を襲った。いがらっぽいその煙にあうと、犬もはげしく、くしゃみをした。そこは、雨が降ると、草花も作物も枯れてしまった。雨は落ちて来しなに、空中の有毒瓦斯を溶解して来る。
長屋の背後の二すじの連山には、茅ばかりが、かさ/\と生い茂って、昔の巨大な松の樹は、虫歯のように立ったまゝ点々と朽ちていた。
灰色の空が、その上から低く、陰鬱に蔽いかぶさっていた。
山は、C川の上で、二ツが一ツに合《がっ》し、遙かに遠く、す
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