その上から受け取った。彼が歩くと薪の塚は崩れそうにゆさ/\と揺れた。
「ちょっと手伝えよ、そんなに日向ぼっこばかりしとらんで。」後藤はスパイにからかった。「遊んどって月給が貰えるんだから、そんなべら棒な仕事はないだろう。」
スパイは苦笑した。
「よいしょ。」
「よい来た。」
「よいしょ。」
「よい来た。」
薪は、積重ねられて、だん/\に家ほどの高さになってきた。五月の太陽はうら/\と照っていた。笹や、団栗《どんぐり》や、雑草の青い葉は、洗われたように、せい/\としている。
「おい/\、こいつ居眠りをしているよ」暫らくして後藤は西山の耳もとへきて囁いた。
「…………」
見ると、スパイは、日あたりのいゝ、積重ねられた薪の南側に腰をおろしてうつら/\櫓をこいでいた。
人の邪魔をしながら、いい気になっていやがるんだ、と西山は思った。彼は何か胸にむら/\とするものを感じた。
「やったろうか!」彼は後藤に囁いた。
「うむ。」後藤の眼はうなずいた。
彼はゆさ/\崩れそうにゆれる薪の上を歩いている宗保に手で合図をした。
宗保が、揺れる薪の上からおりて来ると、三人は、スパイが居眠りをしている
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