、世界中でお砂糖よりおいしいものはないと思つてゐるんだね。おまい、本がよめるかい?」
「よめるよ。少しぐらゐ。」
「ぢやあ、字をかくのは?」
「字をみてかくんならできるよ。それよりもおまいさまァまだ卒業しないのかね。」
「まだだつて? もう七年、中学にゐて、それから五年大学へいくんだよ。そしてお医者になるんだよ。」
「ぢやあ、なにもかも勉強しなくちやあならないんだね。大へんだなァ。」
「おまい、町へいつたことがあるかい?」
「あるもんか。――ちよつ、はしれ、こおら、ちきしようめ。」
二
あたりは、もうすつかりくらくなつて、はだを切るやうな風が、びゆう/\まともにふきつけました。コーリヤは顔中がこほりつき、足が木のやうになつてきました。
リカは、ぎよ車台からとび下りて、馬をぶちながら、じぶんは、そりとならんでいきました。馬は、やつとかけだしました。リカもおくれまいとして、手をふりながらかけました。
けれどすぐにおくれて、うしろにとりのこされました。
コーリヤは、それが気になりました。やつぱりリカがぎよ車台にのつてゐるはうが安心です。リカはなか/\もとへかへりません。
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