。」
いくらどなつても、馬はやつとこさ、そりを引きづッてゐるだけで、この小さな馬車つかひのいふことなんか、ちつともきゝませんでした。
「ちよッ、はしらねえか。こらつ。」と、リカはさけびつゞけました。
「もつとはやくやれよ。リカ。」
コーリヤは、とてもじれつたさうに、いひました。
「いやに急がすね。火事場へいくんぢやあるまいしさ。なんぼ馬だつて、ちつとは、かはいさうだと思つてやんなくちや。おまいさまは、そこにすわつてるが、馬のやつはおまいさまを引つぱつてゐるんだからなァ。ゆんべは材木を引つぱつたんだ。馬もすこしはこたへるよ。」
「なんだ。」と、コーリヤはいひました。
「だつて馬が二頭ぢやないか。ぼくの家の馬なら、一頭だつてもつとはやくはしるぞ。」
「それやあ、お前さまんとこの馬はえん[#「えん」に傍点]麦をたべてるんだもの。おらのは乾草だけだもの。えん[#「えん」に傍点]麦なんか、ちよつとにほひをかゞせるだけだからな。」リカは、いひくはへしました。
「おまいさまだつて、やつぱし、うまいものばつかしたべてんだらう? 砂糖ばつかしなめてんぢやないかよ。」
コーリヤは笑ひました。
「ばか
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