そり(童話)
オイゲン・チリコフ
鈴木三重吉訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)盗棒《どろぼう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)えん[#「えん」に傍点]麦を

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)のろ/\
−−

    一

 はてもない雪の野原を、二頭だてのそりが一だい、のろ/\と動いてゐました。そりにつけた鈴が、さびしい音をたてました。まつ白にこほりついた、ぼろござをきせられた馬は、にえたつた湯気のやうな息を、ひゆう/\はきつゞけました。
 ぎよ車台には、こちらの村の百姓の子で、今年十三になるリカがすわつてゐます。お父つァんの古帽子をかぶつて来たのはいゝけれど、とてもづば/\で、ちよいとでもうつ向くと、ぽこりと、鼻の上までずりおちて来ます。リカは、それを、あらつぽくおし上げながら、
「ほい、ちきしよう。うすのろめ。はやくあるかねえか。ほい。」と、馬をどなり/\しました。
 そりの中には、冬休みで田舎の家へかへつていく、中学二年生のコーリヤが、からだへ外とうや、ふとんをまきつけて、の
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