つてゐます。北風は、ものすごいうなりをたてゝ、ふきまくり、リカの鼻をつねつたり、コーリヤの外とうをつきとほして、氷のやうな息をふきかけたり、指をこち/\にして、動かなくしてしまふかと思ふと、こんどは、ぞつと、くびすぢをなめまはしたりします。リカの靴は、まつ白にこほりついてゐます。帽子の下からのぞき出してゐる髪の毛は、まるで年よりの髪のやうに灰色になつてゐます。
「リカ。」
 中学生のコーリヤはたまらなくなつて、どなりました。
「なにかもつと着せてくれよ。寒くつて寒くつてたまらないよ。」
「なんだつて? 寒い? ちよッ。」
 リカは、かういひ/\、ぎよ車台からとびおりて、帽子をおしあげながら、そりのはうへいきました。そして、大きな手袋をはめた手で、コーリヤのかけてゐる毛布をなほしはじめました。
「おや、ふるえてるな。」
 リカはからかふやうにいひました。
「どうしたの? こゞえちやつたんかね。鼻をほら、鼻をかくさないかよ。家へいくまでに鼻がなくなつちまふよ。みなさい、まあ、なんておまいさまの鼻、赤くなつてんだ。」
「なんだい。鼻なんかどうだつていゝぢやないか、はやくやれよ。」
 そこで、
前へ 次へ
全17ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チリコフ オイゲン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング