北風は、ます/\ふきつのつて、野原の一面をうづまくやうにあれくるひ、雪けむりをたかくまきあげたり、白かばの枝を笛のやうにうならせるかと思ふと、どつと大声で笑つたりしました。
コーリヤは心細くなつてきました。どこかから不意に狼がとび出して、馬をもじぶんたちをも、くひころしはしないだらうか。短刀をもつた悪漢が出てきて、つかまへでもしたらどうしよう。そんなことがおこつたらお母さんや、お父さんや、レーワや、ボーリヤやサシュールカが、それこそどんなに泣くだらう。さうだ、ドウーニヤ叔母さんだつて泣くにきまつてゐる。
コーリヤは、あたりをみまはしました。何だか、ほんたうに狼か悪漢かゞすぐそばでじぶんをねらつてゐるやうな気がしました。間もなく、白かばのかげで、ちらりと何か動きました。コーリヤははつとして目をつぶりました。
「あゝ神さま。もうだめだ。」
「こおら、ちきしよう。走れい。」
リカの声がしました。コーリヤは目をあけました。
「リカ、おまいは、なんにもこはくない?」
コーリヤはいひました。
「なにが?」
「狼が出てくるよ。」
「狼? こんなところに狼がゐるもんか。ゐたつて、そりの鈴の音を
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