きました。
「まあ、なんです?」
「リカつたら、お母さん、リカつたらね、蓄音器をこはがつてるのよ。」
「うそだい。」と、リカはまつ赤になつていひました。
「こはがつてなんかゐるもんか。これあ器械だよ。」
 かう言つて、リカは、しゆつと鼻をすゝりました。お母さんは顔をしかめて、リカの肩をつついていひました。
「さあ、もうたくさん。あつちへおいでよ。ね。」
「あらまだいゝわ。」とサーシュカがいひました。
「もう少しゐさせてあげてよ、ね。」
「いゝえ、もうたくさんですよ。さあ、あつちへいきなさい、リカ。」
 リカは、台所へかへりかけましたが、食堂のところまでくるとふりむいて、
「あ、さうだつけ、おくさま、駄賃をおくれよ。」
「あげますとも。」
「ぢやァ、今すぐおくんなさい。でないとおら、あすは夜あけにいくだから。」
「あいよ、すぐ女中にもつてよこさせます。さあ、あつちへおいで。」
「おらに、ぢかに、ください。その方がまちがひがないから。夜明けにはやくいかないと父ちやんは泊るでねえつていつたんだから、しかられるといけないから。」
 そのときボーリヤが出て来ました。
「坊ちやん、ぢやァさよなら。
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