往古の女性の髪はみんな垂髪であった。それが、この国に文化の風が染みこんでくると、自然髪の置き場所にも気を使うようになり、結髪というものが発達して来た。
むかしは誰も彼も、伸びた髪をうしろへ垂らしていたのであるが、そのうち働く女性達には、あまりながくだらり[#「だらり」に傍点]と垂れた髪は邪魔になって来た。
そこで首のあたりに束ねて結んだ。そうして働きいいようにしているうちに、女性のこと故、その束ねかた結びかたに心を使うようになった――それが、結髪発達史の第一ページではなかろうかと考える。
垂髪時代の女性の髪は一体に長かった。垂髪であるために手入れが簡単で、手入れをしても髪をいじめることがすくなかった。それで髪はいじめられずに、自然のままにすくすくと伸びていった。
今の女性の髪の伸びないのは、いろいろの髷にして、髪をあっちへ曲げ、こっちへねじていじめつける故で、ああいじめつけては髪は伸びるどころか縮むばかりである。
もっとも、今の若いひとは、わざわざ電気をかけて縮ましているのであるから、私などこのようなことを言っては笑われるかも知れないが……
とにかくむかしのひとの
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