ぼこ」などというのは如何にも気のせかせかした、また世帯というものに重きを置いている都会生活者のつけそうな名前で、髷の形を知らぬものでも名前をきいただけで、その形が目に浮かんで来るようである。
京都へくると、また京都らしい情緒をその名称の中にたたえていて嬉しい。
丸髷、つぶし島田、先笄、勝山、両手、蝶々、三ツ輪、ふく髷、かけ下し、切天神、割しのぶ、割鹿子、唐団扇、結綿、鹿子天神、四ツ目崩し、松葉蝶々、あきさ、桃割れ、立兵庫、横兵庫、おしどり(雄)と(めす)とあり、まったく賑やかなことであって、いちいち名前を覚えるだけでも、大変な苦労である。
そのほかに、派生的に生まれたものに次のようなものがある。これは、どこの髷ということなしに各都市それぞれに結われているものだ。
立花崩し、裏銀杏、芝雀、夕顔、皿輪、よこがい、かぶせ、阿弥陀、両輪崩し、ウンテレガン、天保山、いびし、浦島、猫の耳、しぶのう、かせ兵庫、うしろ勝山、大吉、ねじ梅、手鞠、数奇屋、思いづき、とんとん、錦祥女、チャンポン、ひっこき、稲本髷、いぼじり巻、すきばい、すき蝶など……
よくもこれだけの名前をつけられたものだと思う。
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