である。
 細すぎてもならず、毛虫のように太くてもならず、わずか筆の毛一本の線の多い少ないで、その顔全体に影響をあたえることはしばしば経験するところである。
 眉が仕上げのうえにもっとも注意を払う部のひとつであるゆえんである。

 眉も女性の髪や帯と同様にそのひとの階級を現わすものである。
 王朝時代は王朝時代でちゃんと眉に階級をみせていた。眉のひきかた剃りかたにも、おのずとそのひとひとの身分が現われてい、同時にそれぞれ奥ゆかしい眉を示していたものである。
 上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]女房――御匣殿《みくしげどの》・尚侍《ないしのかみ》・二位三位の典侍《すけ》・禁色をゆるされた大臣の女・孫――の眉と、下位の何某の婦の眉と同じということはない。
 むかしは女性の眉をみただけで、あれはどのような素姓の女性であるかということが判った。そこにもまた日本の女性のよさがあったのであるとも言えよう。もちろん素姓のことは眉をみるまでもなく、その人の髪や帯その他のきこなし[#「きこなし」に傍点]を一見しただけで判るには判ったのであるが……

 もっとも今の女性でも、眉
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