眉の記
上村松園

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《》:ルビ
(例)御匣殿《みくしげどの》

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(例)上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]
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 眉目秀麗にしてとか、眉ひいでたる若うどとか、怒りの柳眉を逆だててとか、三日月のような愁いの眉をひそめてとか、ほっと愁眉をひらいてとか……

 古人は目を心の窓と言ったと同時に眉を感情の警報旗にたとえて、眉についていろいろの言いかたをして来たものである。
 目は口ほどにものを言い……と言われているが、実は眉ほど目や口以上にもっと内面の情感を如実に表現するものはない。

 うれしいときはその人の眉は悦びの色を帯びて如何にも甦春の花のように美しくひらいているし、哀しいときにはかなしみの色を泛かべて眉の門はふかく閉ざされている。

 目はとじてしまえばそれが何を語っているかは判らないし、口を噤んでしまえば何もきくことは出来ない。
 しかし眉はそのような場合にでも、その人の内面の苦痛
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