す一双の御屏風も、これに似た調子のものでして、これにも萩を描き加えました。この方の萩は秋萩でして、右片双には中年の婦人を用いました。

 前に感興のことをちょっと述べましたが、私たち筆執るものには、この感興は非常に大事なことで、感興の高さ、深さの如何によって、作品の調子がきまるわけですから、そういう感興によって出来た作品は、小さなものとか、簡単なものは別として、大きなもの、力のはいったものはなかなか、二度と再び出かそうといっても、とても出来そうには思えません。

 帝展は東京と、こちら(京都)で二度見ました。いろいろ婦人画も見ましたが、善悪可否は別としまして、あの濃彩にはただ驚くより外はありません。会場芸術となると、ああしないではなりますまいが、塗って塗ってぬりつぶして、その上からまた線を描き起してあるというようなことで、それがすべての作家にとって、大骨折りだと思います。
 ああいうのを見ますと、この数年来、帝展に御不沙汰をしております私なども、毎年「ことしこそは」と思い、またよく人にも勧められますが、気がひけたり、画債《がさい》に追われたりして、とうとうまだ描けずにおります。

 東
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