値段表が出て来た。
母は習字のほうは相当やっていたので、なかなかの達筆でかかれてあった。
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一、亀の齢 一斤ニ付 金三圓
一、綾の友 同上 二圓五十銭
一、千歳春 同上 二圓
一、東雲 同上 一圓五十銭
一、宇治の里 同上 一圓三十銭
一、玉露 同上 一圓
一、白打 同上 一圓
一、折鷹 同上 八十銭
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まだ他にも気のきいた名前の茶銘が記されてあったが下部が裂けていて値段は判明しない。
今の玉露の値と比較すると問題にならぬほど安かったのである。
そして味も比較にならぬほど美味かった。
あの頃の葉茶屋の空気はまことに和かなもので、お寺の坊さん、儒者、画家、茶人それから町家の人たちがお茶を買いに見えたが、お茶はもっとも上品なお使いものであり、あまり裕かな人でなくとも、よいお茶を飲むことが京都の人たちのたしなみになっていた時代であった。
店は四条通りの賑やかなところにあったから、たえず店の前を人が歩いていた。知り合いの人
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