棲霞軒雑記
上村松園
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)称《よ》ぶ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
−−
松園という雅号は鈴木松年先生が、先生の松の一字をとって下さったのと、絵を学びはじめたころ、私の店で宇治の茶商と取引きがあり、そこに銘茶のとれる茶園があったのとで、それにチナんで園をとり、「松園」とつけたものである。たしか私の第一回出品作「四季美人図」を出すとき松年先生が、
「ひとつ雅号をつけなくては」
と、仰言って考えて下さったもので、
「松園こりゃええ、女らしい号だ」
と、自分の号のように悦んで下さったものである。最初は園の字は四角にかいていたが中年頃から園の中の字は外へはみ出るように書くことにした。松の園生のように栄えるようにと悦んで下さった母の顔を今でも憶い出す。
このアトリエの一屋を棲霞軒と称《よ》ぶ。私はあまり人様と交際もしないで画室に籠城したきり絵三昧に耽っているので、師の竹内栖鳳先生が、
次へ
全16ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
上村 松園 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング