日光などにも行って一週間ばかり見物して廻りました。
 何か百貨店みたいなところで、女の人達が年寄や若い人やの行くのを、京都の人達にくらべてけばけば[#「けばけば」に傍点]しいほどに華美に思ったことを思い出します。博物館で会った女の画家を記憶していますが、ハイカラに結って眼鏡を掛け、華美《はで》な羽織を着て、パッとした色の風呂敷を持ったりして、そして何かを縮図していました。えらい上手そうな様子で縮図しているのをちょっと窺いて見て、何や下手クソやないかと思ったりしたことまで覚えています。

     おしどり

 近頃は大した束髪ばやりで、日本髷はとんと廃《すた》ってしまいましたが、私は日本髷の方がどうも束髪より好きです。
 昔から流行った日本髷のうちには随分いいものが沢山あります。今はほとんどすたってしまったものでも何処かに残っています。芝居などでもいい型は鬘にして残っているのです。
 おしどり[#「おしどり」に傍点]なども可愛らしくしおらしいものです。おしどりは元来京風の髷で、島田に捌《さば》き橋《ばし》を掛けたその捌きが鴛鴦《おしどり》の尻尾に似てもおり、橋の架かった左右の二つの髷を
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