》と言って投げ出す銀煙管《ぎんぎせる》。「は、は。この子は、なかなか、おしゃまだね。」

 知識人のプライドをいたわれ! 生き、死に、すべて、プライドの故、と断じ去りて、よし。職工を見よ、農家の夕食の様を覗《のぞ》け! 着々、陽気を取り戻した。ひとり、くらきは、一万円|費《つか》って大学を出た、きみら、痩《や》せたる知識人のみ!

 くたびれたら寝ころべ!

 悲しかったら、うどんかけ一杯と試合はじめよ。

 私は君を一度あざむきしに、君は、私を千度あざむいていた。私は、「嘘吐き」と呼ばれ、君は、「苦労人。」と呼ばれた。「うんとひどい嘘、たくさん吐くほど、嘘つきでなくなるらしいのね?」

 十二、三歳の少女の話を、まじめに聞ける人、ひとりまえの男というべし。

 その余は、おのれの欲するがまにまに行え。

二十八日。
「現代の英雄について。」
   ヴェルレエヌ的なるものと、ランボオ的なるもの。
 スウィートピイは、蘇鉄《そてつ》の真似をしたがる。鉄のサラリイマンを思う。片方は糸で修繕《しゅうぜん》した鉄ぶちの眼がねをかけ、スナップ三つあまくなった革のカバンを膝《ひざ》に乗せ、電車で、
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