HUMAN LOST
太宰治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)宗助《そうすけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)存外|緊《しま》っていますからねと、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから7字下げ]
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[#ここから7字下げ]
思いは、ひとつ、窓前花。
[#ここで字下げ終わり]



十三日。 なし。

十四日。 なし。

十五日。 かくまで深き、

十六日。 なし。

十七日。 なし。

十八日。
  ものかいて扇ひき裂くなごり哉《かな》

 ふたみにわかれ

十九日。
 十月十三日より、板橋区のとある病院にいる。来て、三日間、歯ぎしりして泣いてばかりいた。銅貨のふくしゅうだ。ここは、気ちがい病院なのだ。となりの部屋の若旦那《わかだんな》は、ふすまをあけたら、浴衣《ゆかた》がかかっていて、どうも工合いがわるかった、など言って、みんな私よりからだが丈夫で、大河内昇とか、星武太郎などの重すぎる名を有し、帝大、立大を卒業して、しかも帝王の如く尊厳の風貌をしている。惜しいことには、諸氏ひとしく自らの身
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