りで一字一字押し印した日記の本文から、読者と共に、ゆっくり読みすすめる。本文は、すべて平仮名のみにて、甚だ読みにくいゆえ、私は独断で、適度の漢字まじりにする。盲人の哀しい匂いを消さぬ程度に。
葛原勾当日記。天保八酉年。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
○正月一日。同よめる。
たちかゑる。としのはしめは。なにとなく。しつがこころも。あらたまりぬる。
山うば。琴にて。五へん。
○同二日。ゑちごじし。琴にて。十二へん。
おふへ村、ちよ美、八つときに、きたる。あづまじし。さみせんと合はせたること、そのかずをしらず。
おもうとち。しらべてあそぶ。いとたけの。かずにひかれて。けふもくらしつ。
ゑちごじし。同五へん。
○同三日。なにごともなく。
○同四日。けいこ、はじめ。
おせん。琴。きぬた。
あぶらやのおせつ。琴。さよかぐら。
とみよしや、おぬゐ。琴。うすごろも。
おりやう。琴。ゆきのあした。
すみ寿。琴。さくらつくし。
おあそ。琴。きりつぼ。
おけふ。琴。こむらさき。
おのみちや、こわさ。さみせん。四きのながめ。
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