いたのである。けれども、十のうち三分は、意識して、末席を選んだようなところもあった。それは、この会合への尊敬のゆえでは無くして、かえって反撥のゆえであったような気もする。反撥どころか、私は、不遜な蔑視の念をさえ持っていたような気もする。私にも、正確なところは判らない。とにかく、私は末席にいたのである。そうして私は、確かに居心地がよかった。これでよし、いまからでも名誉挽回が出来るかも知れぬ、と私は素直に喜んでいた。ところが、それからが、いけなかった。私の、それからの態度は、実に悪かったのである。全然、駄目であったのである。
私は、よくよく、駄目な男だ。少しも立派で無いのである。私は故郷に甘えている。故郷の雰囲気に触れると、まるで身体が、だるくなり、我儘が出てしまって、殆《ほとん》ど自制を失うのである。自分でも、おやおやと思うほど駄目になって、意志のブレーキが溶けて消えてしまうのである。ただ胸が不快にごとごと鳴って、全身のネジが弛《ゆる》み、どうしても気取ることが出来ないのである。次々と、山海の珍味が出て来るのであるが、私は胸が一ぱいで、食べることができない。何も食べずに、酒ばかり呑んだ
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