、と真面目《まじめ》な顔で嘘《うそ》を言う古老もあり、それはどんな書物に出ています、と突込まれて、それは忘れたがとにかくある、と平気で嘘の上塗りをして、年寄りの話は黙って聞け、と怒ってぎょろりと睨《にら》み、とにかく都の評判になり、それ見に行けとお役所の前に押しかけ、夫婦が太鼓をかついでしずしずと門から出て来ると、わあっと歓声を挙げ、ばんざいと言う者もあり、よう御両人、やけます、と黄色い声で叫ぶ通人もあり、いずれも役人に追い払われ、このたびのお仕置きは、諸見物の立寄る事かたく御法度《ごはっと》、ときびしく申しわたされ、のこり惜しそうに、あとを振り返り振り返り退散して、夫婦はそれどころで無く大不平、なんの因果で、こんな太鼓をかついでのこのこ歩かなければならぬのか、思えば思うほど、いまいましく、ことにも女は、はじめから徳兵衛の事などかくべつ可哀想《かわいそう》とも思わず、一銭の金でも惜しい大晦日《おおみそか》に亭主が勝手に十両などという大金を持ち出し、前後不覚に泥酔して帰宅して、何一ついいことが無かった上に亭主と共にお白洲に呼び出され、太鼓なんか担《かつ》がせられて諸人の恥さらしになるのだ
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