。」と打てば響く青砥の蛮声。「銭は、あったか。」
「へえ、ございました。二文ばかり。」と浅田は片手を高く挙げて答えた。
「動くな。動くな。その場を捜せ。それ! 皆の者、そこな下郎は殊勝であるぞ。負けず劣らず、はげめ、つっこめ。」と体を震わせて更にはげしく下知するのである。
 人足たちは皆一様に、妙な腰つきをして、川底の砂利を踏みにじった。しゃがまなくてもいいのだから、ひどくからだが楽である。皆は大喜びで松明片手に舞いをはじめた。岸の青砥は、げせぬ顔をして、ふざけてはいかぬと叱《しか》ったが、そのような恰好をすれば銭が見つかるという返事だったので、浮かぬ気持で、その舞いを眺《なが》めているより他《ほか》は無かった。やがて浅田は、さらに三文、一文と皆の眼をごまかして、腹掛けから取り出しては、
「あった!」
「やあ、あった!」
 と真顔で叫んで、とうとう十一文、自分ひとりで拾い集めた振りをした。
 岸の青砥は喜ぶ事かぎりなく、浅田から受け取った十一文を三度も勘定し直して、うむ、たしかに十一文、と深く首肯き、火打袋にちゃりんとおさめて、にやりと笑い、
「さて、浅田とやら、このたびの働きは、見事
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