でもないが、と答えてまんざらでもないような大|馬鹿《ばか》者のひとりであった。かれはこの時、人足たちと共に片手に松明を持ち片手で川底をさぐっているような恰好《かっこう》だけはしていたが、もとより本気に捜すつもりはない。いい加減につき合って手間賃の分配にあずかろうとしていただけであったのだが、青砥は岸に焚火《たきび》して赤鬼の如《ごと》く顔をほてらし、眼《め》をむいて人足どもを監視し、それ左、それ右、とわめき散らすので、どうにも、うるさくてかなわない。ちぇ、けちな野郎だ、十一文がそんなに惜しいかよ、血相かえて騒いでいやがる、貧乏役人は、これだからいやだ、銭がそんなに欲しかったら、こっちからくれてやらあ、なんだい、たかが十文か十一文、とむらむら、れいの気前のよいところを見せびらかしたくなって来て、自分の腹掛けから三文ばかりつかみ出し、
「あった!」と叫んだ。
「なに、あった? 銭はあったか。」岸では青砥が浅田の叫びを聞いて狂喜し、「銭はあったか。たしかに、あったか。」と背伸びしてくどく尋ねた。
浅田は、ばかばかしい思いで、
「へえ、ございました。三文ございました。おとどけ致します。」と言
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