チーズが、わしに何か願いがあるとか言っていましたね。なんですか?」
レヤ。「はい。実は、フランスへ、もう一度遊学に行かせていただきたいと思っているのでございますが。」
王。「その事でしたら、かまいません。君にも此の二箇月間、ずいぶん働いてもらいました。もう、こちらは、どうやら一段落ですから、ゆっくり勉強しておいでなさい。」
レヤ。「恐れいります。」
王。「君の父にも相談した上の事でしょうね。ポローニヤス、どうですか?」
ポロ。「はい。どうにも、うるさく頼みますので、とうとう昨夜、私も根負け致《いた》しまして、それでは王さまにお願いして見よと申し聞かせた次第でございます。ヘッヘ、どうも若いものには、フランスの味が忘れかねるようでございます。」
王。「無理もない。レヤチーズ、子供にとっては、王の裁可よりも、父の許しのほうが大事です。一家の和合は、そのまま王への忠義です。父の許しがあったならば、それでよい。からだを損わぬ程度に、遊んでおいで。若い時には、遊ぶのにも張り合いがあるから、うらやましい。ハムレットは、このごろ元気が無いようですが、君もフランスへ行きたいのですか?」
ハ
前へ
次へ
全200ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング