てくれるだろうと思う。まことに此の頃《ごろ》のデンマークは、ノーウエーとも不仲であり、いつ戦争が起るかも知れず、王位は、一日も空けて置く事が出来なかったのです。王子ハムレットは若冠ゆえ、皆のすすめに依《よ》って、わしが王位にのぼったのですが、わしとても先王ほどの手腕は無し、徳望も無ければ、また、ごらんのとおり風采《ふうさい》もあがらず、血をわけた実の兄弟とも思われぬくらいに不敏の弟なのですから、果して此の重責に堪え得るかどうか、外国の侮《あなど》りを受けずにすむかどうか頗《すこぶ》る不安に思って居《お》りましたところ、かねて令徳の誉《ほまれ》高いガーツルードどのが、一生わしの傍にいて、国の為、わしの力になってくれる事になりましたので、もはや王城の基礎も確固たり、デンマークも安泰と思います。皆も御苦労でした。先王が亡くなられてから今日まで、もう二箇月にもなりますが、わしには何もかも夢のようです。でも皆の聡明《そうめい》な助言に依って、どうやら大過なく、ここまでは、やって来ました。いかにも未熟の者ですから、皆も、今日以後、変らず忠勤の程を見せ、わしを安心させて下さい。ああ、忘れていた。レヤ
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