ム。「僕ですか? からかわないで下さい。僕は地獄へ行くんです。」
 王。「何を、ぷんぷんしているのです。あ、そうか。君は、ウイッタンバーグの大学へ、また行きたいと言っていましたね。でも、それは怺《こら》えて下さい。わしからお願いします。君は、もうすぐ此のデンマークの王位を継がなければならぬ人です。今は国も、めんどうな時ですから、わしが仮に王位に即《つ》きましたが、此の危機が去って、人々の心も落ちつけば、わしは君に跡を継いでもらって、ゆっくり休息したいと思って居ります。それゆえ君は、いまからわしの傍にいて、少しずつ政治を見習うように心掛けなければいけません。いや、わしを助けてもらいたいのです。どうか、大学へ行くのは、あきらめて下さい。これは、父としての願いでもあるのです。君が、いなくなると、王妃だって淋《さび》しがるでしょう。君は、このごろ健康を害しているようにも見えます。」
 ハム。「レヤチーズ、――」
 レヤ。「はい。」
 ハム。「君は、いい父を持って仕合せだね。」
 王妃。「ハムレット、なんという事を、おっしゃるのです。私には、あなたが、ふてくされているようにしか思われません。そん
前へ 次へ
全200ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング