。これからは暖くなる一方だ。もう、デンマークも、やがて春さ。ところで、どうだね、みな元気かね。」
ホレ。「王子さま。僕たちの事より、御自身はいかがです。」
ハム。「へんな言いかたをするね。何か、僕に就《つ》いて、悪い噂でも立っているのかね。ウイッタンバーグは、口がうるさいからなあ。ホレーショー。君は、へんだよ。何だか、よそよそしいね。」
ホレ。「いいえ、決してへんな事はありません。本当に、王子さま、あんたは大丈夫なんですか? ああ、寒い。」
ハム。「王子さま、か。そんな筈じゃ無かったがねえ。おい、以前のようにハムレットと呼んでくれ。すっかり他人になってしまったね。君は、いったい、何しにエルシノアへ来たんだ。」
ホレ。「ごめん、ごめん。相変らずのハムレットさまですね。すぐ怒る。案外に、お元気だ。大丈夫のようですね。」
ハム。「いやな言いかたをするなあ。何か悪い噂を聞いて来たのに違いない。なんだい? どんな噂だい、言ってごらん。叔父さんが君に、要らない事を言ってやったんだろう。きっとそうだ。ちっとも知りゃしない癖に、要らない事ばかり言いやがる。」
ホレ。「いいえ、王さまのお手
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