花聟。(ホレーショー。)
おお、抱いてやるとも、私の小鳩《こばと》。
向うの森のあたりには、星がまばたいているだけだ。
あやしい者は、どこにもいない。
朔風《きたかぜ》の勁《つよ》い夜には、星の光も、するどいものです。
亡霊。(ハムレット。)
もし、
もし。
花嫁さん。
一緒においで。よもや、わしを、見忘れた筈《はず》はあるまい。
わしの声は、こがらし。わしの新居は泥《どろ》の底。
わしと一緒に来ておくれ。
氷の寝床に来ておくれ。
呼んでいるのは、私だよ。忘れた筈は、よもや、あるまい。
おいで、と昔ひとこと言えば、はじらいながら寄り添った咲きかけの薔薇《ばら》。
いまは、重く咲き誇るアネモネ。
綺麗《きれい》な嘘《うそ》つき。
おいで。
花嫁。(ポローニヤス。)
あなた。もっと強く抱いて!
あの人は、昔の影で、あたしを苦しめに来ています。
あの人は、冷たい指で、あたしの手頸《てくび》を掴《つか》んでいます。
ああ、あなた。しっかり抱いて下さいませ。あたしのからだが、あなたの腕から、するりと抜けて、あの森の墓地までふわふわ飛んで行きそうです。
あの松籟《まつかぜ》は、人の声。
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